子どもに健やかな育ちを
コロナ対策契機に悲願の「少人数学級」実現なるか〜オンライン署名継続中!
コロナ禍の中で学ぶ子どもたちに、少人数学級による豊かな学校生活を。教育研究者有志の呼びかけで今、オンライン署名が始まっている。政府の教育再生実行会議でも少人数学級の具体化に向け動き出している。果たして実現するのかー。
コロナ禍の中で迎えた初めての夏休みが終了し、全国の小中高校では新学期が始まった。東京では23区のうち13区の小中学校が、例年よりも一週間早い8月24日から授業を再開するなど、学習の遅れを取り戻すために、夏休みが短縮された例も多い。
しかし動きが活発で、無症状が多い子どもたち。学校現場での集団感染者(クラスター)は心配の種だ。実際、緊急事態宣言解除から2ヶ月がたった7月には、東京・大阪や名古屋などの学校でクラスターの発生が明らかになり、再び臨時休校が相次いだ。また夏休み中にも、島根県松江市内の高校・部活内や、福岡市内の専門学校など、複数の地域の小中高、保育園などで感染者クラスターが発生。早めの新学期をスタートさせた千葉県や埼玉県、川崎市などでも、生徒に感染者が出て臨時休校を余儀なくされる例が相次いでいる。
少人数学級を求める署名運動がスタート
窮屈な生活を余儀なくされている子どもたちがのびのびと学校生活を過ごせるうようにするためには、少人数学級の実現が急務。そう声をあげたのは、教育関係者の有志11人。元文部事務次官の前川喜平氏も名を連ねている。
(1)感染症対策として安心・安全な少人数学級をすみやかに実施すること。(2)授業を詰め込みすぎず仲間との学びと豊かな学校生活を保障すること
この2点を求め、7月から署名活動を展開している。
呼びかけ人の一人、名古屋大学の中嶋哲彦教授は7月16日に開かれた記者会見で、「現在の日本の学級編成はOECD諸国においても最大級になっている。」年的。「文科省が学校に指示しているコロナ対策においても、現在の40人編成ではなく30人、20人体制に下げなければ、十分な空間を取ることはできない」として、国は学校に対策を求めるだけではなく、少人数学級が実現できる措置を講じるよう求めた。
また東京大学の本田由紀教授は、コロナ禍での登校制限や授業制限によって、クラス内での教育格差がこれまで以上に顕著になり、勉強から取り残される子どもたちが増えていると指摘。一方で、感染回避のための分散登校対策によって少人数学級が一時的に実現したことで、現場の教員からは、「子どもたちの表情が良く見えるようになった」という声が上がっていることを紹介し、教育格差や現場の教員への労働負担軽減という意味でも少人数学級が推進されるべきだと強調した。
署名サイト「コロナの危険の中で学ぶ子どもたちに、少人数学級と豊かな学校生活を保障してください」 には、8月27日現在、2万5000筆近くの署名が集まっている。
「少人数学級」の実現なるか〜いまが正念場
「少人数学級」をめぐっては、8月25日に官邸で開催された政府の教育再生実行会議でも推進する声が上がり、安倍首相や萩生田文部科学大臣も前向きな意向を示したという。萩生田光一文科相は9月1日の閣議後会見で、「新たな感染症に対応できる学校を作っていかなければならない。」として首相が交代しても、実現を目指すべきだとの考えを示している。今後は専門家によるワーキンググループなどを設置して、来年5月をめどに提言をまとめる予定だ。
長い間、教育現場の悲願だった「少人数学級」の実現。機運の高まりのなか、京都では8月8日、「子どもと教育・文化を守る京都府民会議」と「公立高校30人学級をすすめる会」が「めざせ20人程度学級!『少人数学級署名』を一気に広げる学習会」を開き、署名活動に取り組み始めた。9月上旬に安倍晋三首相と萩生田光一文科省あてに提出する予定だ。新型コロナウィルス感染症の拡大をテコに実現なるか。正念場といえる。
少人数学級のあゆみ
1クラスの学級規模は、義務教育標準法で定められており、公立小中学校の1学級の人数について、1950年に50人、1964年度に45人、80年度に40人へと弾き下げてきた。
民主党政権下の2011年度には、小学1年生の「35人学級」となるよう法律を改正。翌2012年度には法改正をせず、加配によって、2年生の「35人学級」を実現した。しかし、自民党への政権交代に伴い、文科省が進めようとしていた「35人学級」の一律導入は、8年間棚ざらしになっていた。
by covot編集部
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