まともな仕事と待遇
ブラジル人学校が存続の危機に 〜親の解雇で月謝不足
新型コロナウィルスの感染拡大に伴う緊急リポート。今回は、リーマンショック以来の経営難に陥っている滋賀県にあるブラジル人学校「コレジオ・サンタナ学園」とつなぐ。親が働き場所を失ったり、仕事を減らされていることが原因で、月謝を支払えない子どもが増えているという。
サンタナ学園は1998年、日系ブラジル人の中田ケン子さんが設立したブラジル人学校だ。1990年以降、日本には、多くの日系ブラジル人が出稼ぎに来ていたが、子どもたちの多くが学校にも通わず、テレビやゲームだけの日々を過ごしていた。この様子を、ブラジルから一時的に帰国していたケン子さんが目撃。子どもたちには教育が必要だと一発奮起し、滋賀県の東端にある愛荘町にブラジル人学校を開いたという。
現在、この学園に通っているのは0歳から18歳までの75人。保育園から高校までの機能を果たしていて、校長のケン子先生は朝5時には車で各家庭に子どもたちを迎えに行き、朝、昼、夕と3食を提供。教育の場であるとともに、長時間、働きづめの出稼ぎ労働者である両親の代わりに、生活の場も提供しているのである。
サンタナ学園の保育部門は無認可保育所として認められているため、昨年10月から、保育の無償化の対象とはなった。しかし、小学校から高校は国の基準を満たしていないため、文科省の補助金などは一切受けていない。運営費用は生徒の月謝が頼りだが、常に財政だ。
7世帯の親が職を失った
そのサンタナ学園をコロナ禍が襲った。全国で休業要請が出る中、7世帯の親が職を失ったのである。この影響で10人以上の子どもが月謝を支払えず、学校に通えなくなった。実は、ケン子先生は、事情がわからない小さい年次の子どもは、月謝がなくとも受け入れをしている。というのも、多くの子どもが同じ社宅などに住んでいるため、送迎の際に、学園に来たがっている子どもを一人だけ残すことは難しいためだ。
一方、年代の高い子どもは、他の世帯の手前もあり、月謝が支払えない場合は休んでもらっている。子どもたちは学校に行き、友だちと会えることを心待ちにし、毎日のようにFacebookを通じて、学校の様子を聞いたり、友だちの様子を聞いたりして、不安を解消しているという。
中には、半年前に来日し、来日時の飛行機代のローンを派遣会社に支払っている最中に仕事がなくなり、飛行機代の支払いを猶予してもらっている家庭もあるという。また、月々5万円する派遣会社の社宅を出て、格安の雇用促進住宅に入居したものの、会社が怒って解雇し、家賃の支払いに窮している家庭もある。コロナの影響で新たな仕事を見つけることは容易ではなく、心細い日々を送っている。
学校の危機を救え!〜クラウドファンデイィングに350万円
学校の運営を担当している事務局の柳田安代さんは先月、クラウドファンディング を立ち上げた。月謝やバザーなどによる収入減で学校の存続が危ぶまれたからだ。すると、全国から寄付が集まり、目標にかかげていた250万円はあっという間に集まった。250万円はサンタナ学園の1ヶ月分の運営資金にあたる。しかし、子どもの親の仕事がすぐに見つかるのか。先の見通しが立たない中、次の目標をかかげている。「月謝」を支払えない、厳しい経済事情の家庭の子どもにも等しくも受け入れ、教育を受けさせたい」それが、ケン子先生の願いだ。
by covot編集部
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